「今日は人を家に呼びたくない」
「今はこの話をしたくない」
「私の写真を公開してほしくない」
「今週末は自分のための時間が必要なの」
相手の境界線を、心地よく感じられないこともあります。
- 予定が狂うかもしれません。
- がっかりするかもしれません。
- 望んでいたものが得られないかもしれません。
まさにそんなとき、私たちが本当に境界線を尊重しているかどうかが表れます。
自分も賛成できる境界線を尊重するのは、比較的簡単だからです。
「こう思ってしまう」ときに尊重するのは、ずっと難しくなります。
そんなの大げさだよ。
そんなこと、まったく必要ないでしょ。
でも、それじゃこっちの生活が大変になる。
私のことが好きなら、気にしないはずだよ。
境界線を尊重することは、賛成することではない
想像してみてください。
今日は誰にも家に来てほしくない。
あなたはこう思うかもしれません。
別に問題ないと思うけど。
がっかりするかもしれません。
会えるのを楽しみにしていたのに。
あるいは、こう伝えることもできます。
予定していたから、残念だよ。
どれも問題ありません。境界線を尊重することは、次のような意味ではありません。
「あなたと同じ意見を持たなければならない」
むしろ、こういうことです。
「私は違う感じ方をしているけれど、あなたにとって大切なことだと真剣に受け止める」
たとえば、こう伝えられます。
会えるのを楽しみにしていたから残念だよ。でも、今日は家に人を呼びたくないということはわかった。
この二つは、同時に成り立ちます。
境界線は、自動的に交渉の始まりになるわけではない
相手が言います。
そこには行きたくない。
すると、こんなやりとりが始まります。
でも、どうして?
そんな気分じゃない。
でも、たった2時間だけだよ。
それでも行きたくない。
じゃあ、早めに帰るとしたら?
いや。
せめて少しだけでも来てよ。
一つひとつの質問は、悪気のないものに思えるかもしれません。
でも、これらが重なると、相手が「ノー」を十分にうまく説明できたときだけ、その「ノー」が有効になる状況が生まれます。
それは、境界線を十分に尊重しているとは言えません。
ときには、こんな問いを自分に投げかけると役立ちます。
相手をもっと理解するために尋ねているのか、それとも相手の「ノー」を「イエス」に変えるための口実を探しているのか?
だからといって、理由を尋ねてはいけないわけではありません。
次の二つには違いがあります。
何が嫌なのか聞いてもいい?もっとよく理解したいんだ。
と、
で、何がそんなに嫌なの?別に何でもないじゃない。
最初の質問は、相手に話す余地を与えています。
二つ目は、相手の境界線には正当性がないという判断を、すでに含んでいます。
がっかりするのはかまわない。圧力をかけるのは違う
相手に何かを断られたからといって、次のように取り繕う必要はありません。
全然大丈夫だよ。まったく気にしてない。
- 気に障ることもあります。
- 悲しくなることもあります。
- 腹が立つこともあります。
こう伝えてもかまいません。
残念だよ。本当に一緒に行けたらと思っていたんだ。
これは、自分がどう感じているかを伝えるものです。
それとは違うのが、次のような言葉です。
つまり、また私のことなんてどうでもいいんだね。
あるいは、
本当に私を愛しているなら、やってくれるはずよ。
あるいは、
僕なら君のためにやるのに。
こうなると、がっかりした気持ちを、相手の決断を変えさせる手段として使い始めています。
がっかりしていても、境界線を尊重することはできます。
境界線を示したことへの罰に気をつける
境界線を表面上は受け入れることがあります。
わかった。
でも、そのあと相手を罰してしまいます。
- 連絡をやめる。
- 何時間も、あるいは何日も冷たい態度をとる。
- わざと嫌がらせをする。
- 皮肉を言い始める。
そうだね、あなたには自分の時間が必要なんだもんね。
あるいは、心配しないで。もう二度と何も頼まないから。
これは、次のように伝えるのとは同じではありません。
今はかなりがっかりしているから、少し一人になりたい。そのあとで、またこの話をしたい。
自分の感情を整理する必要があるのは、正当なことです。
罰するために引きこもるのは、目的が違います。
「言うことを聞かないなら、痛い目に遭わせる」
それも、圧力をかける方法になりえます。
境界線を尊重するとは、回避する方法を探さないこと
相手が言います。
今日はそのことを話したくない。
10分後、あなたはこう言います。
質問を一つだけ……
相手が言います。
私の写真を公開してほしくない。
すると、あなたはこう考えます。
公開プロフィールには載せない。でも、友達のグループならいいよね。
あるいは、相手がこう言います。
大事な用件でない限り、仕事中に電話しないで。
すると、あなたはこう思いつきます。
じゃあ、1分だけ電話しよう。
形式上は例外を探しているのかもしれません。でも実際には、境界線をどこまで押し広げられるかを試しています。
境界線を尊重するとは、こちらに都合のよい言い回しを探して形式的に回避するのではなく、その意図を尊重することです。
境界線の意味がはっきりしないときは、こう尋ねられます。
仕事中に電話してほしくないというのは、代わりにメッセージを送って、返せるときに返事をしてもらうのなら大丈夫?
これは、自分で勝手に例外を作るのとは違います。
誰かが「境界線」と呼ぶものが、必ずしも境界線とは限らない
「境界線」という言葉は、ときに、相手がもう何も異議を唱えられないかのような主張として使われることがあります。
たとえば、
私の境界線は、あなたがその友達と会わないこと。
これでは、本人が自分で何をする意思があるかという話にとどまりません。
相手の行動を決めようとしています。
境界線は、たとえば次のようなものです。
誰と会うかを互いに決め合うような関係にはいたくない。
あるいは、
話しているときにあなたが私に怒鳴ったら、会話を中断して、あとで再開する。
違いは、境界線が通常、次のようなことを表す点にあります。
「自分が受け入れること、すること、あるいは続けることはここまで」
相手をコントロールする言葉は、こうです。
「あなたはこうしなければならない」
ただし、その違いはいつも明確とは限りません。
人間関係には、共通の責任、共同生活、子ども、お金、取り決めなどがあります。
たとえば、一方的にこう言って、
私の境界線は、もう子どもの世話をしないこと。
二人で担う責任をなくすことはできません。
でも、こう伝えることはできます。
今の育児の分担を、長いあいだ続けるのはもう難しい。別のやり方を一緒に考えてほしい。
境界線は、共通の責任を一方的になくしたり、相手の生活を支配したりするための魔法の言葉ではありません。
境界線を尊重することは、自分のニーズをあきらめることではない
パートナーが言います。
土曜日は一日中、自分の時間が必要なんだ。
あなたにも、同時に必要なことがあるかもしれません。
週末に一緒に過ごす時間がほしい。
自分のニーズを捨てる必要はありません。
こう伝えられます。
土曜日は一人で過ごしたいんだね。でも、定期的に一緒に過ごす時間があることは、私にとって大切なの。日曜日ならどうかな?
境界線を尊重しています。
「土曜日は一人で過ごす必要がある」
同時に、自分のニーズも伝えています。
「一緒に過ごす時間が必要だ」
解決策を探すのは、そのあとです。
相手に、境界線が必要ない理由を説かない
こうするのは、とても魅力的に感じられることがあります。
相手が言います。
私のスマホのメッセージを読まないで。
すると、あなたはこう答えます。
僕に隠し事がないなら、気にならないはずでしょ。
あるいは、
今夜は少し静かに過ごしたい。
でも、一日中一人だったじゃない。
あるいは、
みんなの前で、そんなふうに私をからかわないで。
でも、みんな冗談だってわかってるよ。
どの場合も、相手にこう伝えていることになります。
「あなたの理由は、私には十分だと思えない」
でも、相手にとって大切な境界線であるために、私たちの承認を得る必要はありません。
- 理解できないこともあります。
- 賛成できないこともあります。
- 詳しく尋ねることもできます。
でも、相手にその境界線は必要ないと証明する必要はありません。
「前は気にしていなかった」は、「今日も気にしなくてよい」という意味ではない
人は境界線を変えることがあります。
- 以前は同意していたことを、今は望まない場合があります。
- それが心地よくないと気づいたのかもしれません。
- 状況が変わったのかもしれません。
- 当時とは心身の状態が違うのかもしれません。
たとえば、
前はうちに泊まっていいって言ったじゃない。
だからといって、次の意味にはなりません。
「今回も同意しなければならない」
同じように、
前はその冗談、気にしてなかったじゃない。
だからといって、その人が今後ずっと受け入れなければならないわけではありません。
こう尋ねてもよいでしょう。
今はそれが嫌なんだね。何か変わったの?
でも、以前とは違うというだけで、境界線の変化をだましや不公平だと決めつける必要はありません。
境界線を具体的に確認する必要があることもある
境界線が漠然としていることがあります。
仕事中は邪魔しないで。
「邪魔する」とは、どういう意味でしょうか?
- 電話すること?
- メッセージを送ること?
- 仕事部屋に入ること?
- 大事な用件の場合はどうする?
そんなときは、具体的に尋ねてかまいません。
尊重したいから、具体的にどういう意味か教えてもらえると助かる。仕事が終わってから読めるようにメッセージを送ってもいい?
これは境界線を押し切ろうとしているのではありません。
どうすれば本当に尊重できるのかを理解しようとしているのです。
同じように、
今は一人にしてほしい。
と言われたら、確認できます。
わかった。今日は完全に一人でいたい?それとも、夜にまたこの話をしてもいい?
具体的にすることで、同じ言葉からそれぞれが違うことを思い浮かべてしまうのを防げます。
境界線が、私たちにも影響することがある
中立ではない境界線もあります。
パートナーが言います。
一緒に暮らしたくない。
あなたは、二人で暮らすことを関係の将来にとって大切だと思っています。
あるいは、
子どもはいらない。
あなたは、子どもがほしいと思っています。
あるいは、
この関係では、もっとずっと一人の時間が必要だ。
あなたには、もっと多く一緒に過ごす時間が必要です。
そんなときは、その違いを解決できる言い方がないかもしれません。
相手の境界線を尊重することは、こう言うことではありません。
「じゃあ、自分のニーズはあきらめる」
こう伝えられるかもしれません。
一緒に暮らしたくないという気持ちは尊重するよ。でも、僕にとっては長い目で見て大切なことなんだ。二人の関係にとってどういう意味があるのか、考えなくてはならない。
相手は自分について決めます。そして、あなたも自分について決め続けられます。
境界線の尊重は、従属することではありません。相手には、自分にとって何が受け入れられるかを決める権利があります。あなたにも、自分にとって何が受け入れられるかを決める同じ権利があります。
交渉では解決できない違いもある
うまくいく方法を見つけられることはよくあります。でも、そうできないこともあります。
一方がこう言い、
これはしたくない。
もう一方がこう言うなら、
これなしでは、私はこの関係を続けたくない。
二人とも満足できる妥協点がないかもしれません。
それは必ずしも、コミュニケーションの失敗ではありません。
よいコミュニケーションを通じて、ただお互いのニーズが一致しないと、より正確にわかったのかもしれません。
それも大切な結果です。
相手の境界線によって、自分が大きく制限されると感じたら?
いくつかの選択肢があります。
- 気に入らなくても、境界線を受け入れる。
- 双方のニーズを尊重できる別の方法がないか尋ねる。
- その状況で自分に何が必要かを伝える。
- そのような形では、長期的に自分には受け入れられないと決める。
健全な選択とは言いにくいのは、次のようなことです。
相手が境界線を変えるまで、説得し続ける。
相手の境界線が自分にとって大きな問題なら、圧力をかけて少しずつ崩そうとするより、率直に伝えるほうが役立つことがよくあります。
境界線を尊重するのは、とても簡単な言葉で表せる
相手:
今日は人を家に呼びたくない。
あなた:
今日はまったく人を呼びたくない、という理解で合ってる?
相手:
そう。
あなた:
わかった。会えるのを楽しみにしていたから残念だけど、尊重するよ。次から訪問の予定をどう決めるかは、また一緒に相談しよう。
数文のやりとりの中で、あなたはいくつか大切なことをしています。
- 境界線を正しく理解しているか確認した。
- 自分がどう感じているかを正直に伝えた。
- 相手を説得しようとしなかった。
- 今後の相談の余地を残した。
これは、次のような言葉とは違います。
でも、もうみんなに約束したんだ。
そんなことを僕にするなんてひどいよ。
1時間だけでいいじゃない。
いったい何がそんなに気に入らないのか、もうわからないよ。
どう返したらよいかわからないときのシンプルな手順
次の順序が役立つかもしれません。
境界線を聞く → 理解しているか確認する → 自分の感情やニーズを伝える → 無理に説得しない → 自分に何ができるかを決める。
たとえば、
今日はその話をしたくないんだね。解決したいから残念だけど、いつ話を再開できるかは知っておきたい。明日の夜なら大丈夫?
ここでは、境界線を尊重しています。
「今日は話さない」
同時に、自分のニーズも消えてはいません。
「問題をいつか解決したい」
このように、双方の境界線を尊重することができます。
相手の境界線を尊重しても、自分の声を失わなくていい
相手の境界線が不快に感じられることも、それを大げさだと思うことも、予定が狂うことも、失望や不安を感じることもあるでしょう。
そうした気持ちを否定する必要はありませんし、相手の世界の見方に賛成する必要もありません。
大切なのは別のことです。
相手の境界線が心地よいとは限らず、自分の望みと両立しないこともあります。それを尊重するとは、相手に変更を強制しないことです。ただし、それを自分の人生でどう受け止めるかを決めるのは、あくまであなたです。
「ノー」を尊重するのは、結果がどうでもいいときには簡単
実際の会話では、境界線によって、本当に望んでいるものを失うことがあります。
- パートナーがその話を続けたくない。
- 友人が頼みを断る。
- 同僚がこれ以上仕事を引き受けたくない。
- 親しい人が、もっと距離を置きたいと思っている。
まさにそんなとき、もう一度説明したり、説得したり、理屈を並べたり、罪悪感を抱かせたりしたくなることがあります。
Duovioでは、そうした状況を安心して練習できます。仮想の相手が境界線を示し、相手に決断を変えるよう迫らずに、自分の失望やニーズを伝える練習ができます。
理解すること、交渉すること、圧力をかけることの違いを試しながら、自分自身を見失わずに相手を尊重する反応を探せます。